2015年3月9日月曜日

高校数学で学ぶ演算子とその線形性

何らかの(数学的)処理を指示するものを「演算子」と呼びます。
たとえば、"+"という演算子はふたつの数を足すことを意味し、"√"という演算子は根号の中の平方根を求めることを意味します。

今回は、高校数学で登場する演算子とその線形性について注目してみます。

必要な知識
- とくになし




四則演算に用いられる「+×-÷」や$_{\it n}\mathrm{C}_{\it r}$ど二つの数字間にはたらく演算子を二項演算子と呼び、$\sin$などの一つの数字に働く演算子を単項演算子と呼びます。$\sin$は続く数(や文字)に対応する正弦を求めよという演算子でした。

単項演算の多くは、演算子の後ろに演算子を働かせたいものを書きます。例えば、$\sin \pi$や$\frac{d}{dx}x^2$などを考えれば、確かに演算子の後ろに演算子を働かせたいものがきていることが理解できると思います。一方で、例外的に、$!$は演算子が演算子を働かせたいものの後ろに来ます。$5!$などと表記しますが、$!5$という表記はしませんね。

高校までの数学で登場する演算子を思いつく限り書いてみます。

\begin{equation*}
+,-,\pm,×,÷,/, ^n,\lim,\sin,\cos,\tan,\log,_{\it n}\mathrm{C}_{\it r},',_{\it n}\mathrm{P}_{\it r},\frac{d}{dx},\int,\sum,!,\sqrt[n]{},・
\end{equation*}

高校数学の教科書には載っていませんが、次のような演算子もよく使われます。

\begin{equation*}
_{\it n}\mathrm{\Pi}_{\it r},\prod,{\rm {Re}},{\rm {Im}},{\rm mod},!!
\end{equation*}

演算子には、「線形」のものと「非線形」のものに区別されます。線形という言葉の意味は以下の通り。

定義
次の(i),(ii)の両方をみたすとき、$f(x)$は線形性をもつという。
(i) $f(x+y) = f(x) + f(y) $
(ii) $f(\alpha x) = \alpha f(x)$

これを満たす演算子と満たさない演算子があることをしっかりと認識しないと、よく高校生にみられる誤解がおこります。

たとえば、総和記号シグマは
\begin{eqnarray*}
\sum_{k=1}^{n} (k^2 + k) & = & \sum_{k=1}^{n} k^2 + \sum_{k=1}^{n}  k \\
\sum_{k=1}^{n} \alpha k & = & \alpha \sum_{k=1}^{n} k
\end{eqnarray*}
などが成立しているので、線形な演算子です。ほかにも、
\begin{eqnarray*}
\lim_{n \to \infty} (a_n+\alpha b_n) &=& \lim_{n \to \infty} a_n + \alpha \lim_{n \to \infty} b_n \\
\frac{d}{dx} \{ f(x) + \alpha g(x) \} & = & \frac{d}{dx} f(x) + \alpha \frac{d}{dx} g(x) \\
\int_{a}^{b} \{ f(x) + \alpha g(x) \} dx &=& \int_{a}^{b} f(x) + \alpha \int_{a}^{b} g(x) dx
\end{eqnarray*}
などが成立しているので、これらも線形な演算子であることがわかります。しかし、明らかに、
\begin{eqnarray*}
(a + b) ! & = & a! + b! \\
\log (x + y) & = & \log x + \log y  \\
\sqrt{a+b} & = & \sqrt{a} + \sqrt{b}
\end{eqnarray*}
は一般には正しくない(注1)ので、これらの演算子は非線形です。

数学を学ぶにつれて、扱う演算子が増えていきますが、そのつど、演算子が線形なのか非線形なのかを意識するように心掛けてくさい。これを意識せず、線形の演算子にしか適応できない計算規則を乱用した、$\sin(x+y)=\sin(x)+\sin(y)$などという勘違いが起きてしまいます(こういう勘違いをする高校生が本当に多い!)。


(注1) ここでいう「一般には正しくない」とは、たとえば、$a$と$b$の値によっては等号が成立するが、全ての$a$と$b$について成立しているわけではないという意味です。

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